制限酵素部位の付加
クローニングを行うとき、制限酵素部位は非常に大事です。クローニングのための、制限酵素部位の付加についてお話していこうと思います。
基本はPCRで付加する
プライマーに制限酵素部位を設計しておけば、PCRをかけるだけで増幅されたDNAに制限酵素部位が付加されます。なので、プライマー設計から一緒にやっていきましょう。ここでは、TAクローニング前提のものと、PCR産物をそのままクローニングに使用する場合、それぞれについてプライマー設計を紹介していきますね
プライマー設計(TA cloning)
鋳型のプラスミドがあることを前提に、お話していきます。例えば、以下のインサートDNAに制限酵素部位(HindIII、EcoRI)を付加してみましょうか。
5'-ACAGGCCTCTATCCTAGCTCCTACT…CGTATTTGTGGGTTGGTGTAGAATT-3'
となるように設計してあげます。
TAクローニング前提の場合は、これに制限酵素部位を付加するような配列を付加すればOKです。すなわち、
Fw Primer:5'-AAGCTTACAGGCCTCTATCCTAGC-3'
Rv Primer:5'-GAATTCAATTCTACACCAACCCAC-3'
これでPCRをかけてあげれば、制限酵素部位を付加したPCR産物が増幅されるので、これをTAクローニングすればOKです。制限酵素の突出末端の向きを変えたい場合には、今記載してあるところの逆鎖で設計してあげればOKです。
ベクター中で切断されない制限酵素、切断配列が同じ制限酵素はNGなので気を付けてください(切断配列が同じものでのクローニングはお勧めしません、セルフライゲーションが起きやすいからです)。
プラスミドが取れたら、制限酵素処理して部位が入っているかをチェックして、バンドが確認できたら大丈夫です。
プライマー設計(PCR Amplicon)
PCR産物を直接制限酵素処理する際には、制限酵素部位+スペーサーが必要になります。PCR産物の末端にすぐ制限酵素部位が来てしまうとうまく作用してくれないので、5-10bpほどのスペーサー配列を付け加えてください(TAクローニングでスペーサーがいらないのは、ベクターの配列があるからですね)。
配列の設計はさっきと同じです。5'-に10bpくらいのランダム配列を加えればいいです。PCRで増やした後は、バンドを確認して、精製した後に制限酵素処理をしましょう(PCR産物に直接制限酵素加えてもいいですが、あまり切断効率がよくない気がします...)。なので、PCRの系は多めにかけておくとよいです。
ちょっとしたコツ
制限酵素処理が付加されないときは...
TA cloningでは制限酵素処理した際にバンドが確認できないこともあります。これどうしたらいいのかというと、力技で解決できます。プライマー設計を、
ベクターの配列15bp+制限酵素部位+PCRのアニーリング部位
で設計して、Gibson Assemblyします。これで解決しました。
Gibson Assemblyはベクターとの相同配列がないと環状DNAにならないので、制限酵素部位の付加率が非常に高くなります。Tベクターじゃなくともクローニングできるのもいい点ですね。
作成日:2024/12/23