部位特異的変異導入(Site Directed Mutagenesis)
部位特異的変異導入はDNA上に変異を入れるための操作になります。例えばエラー校正、アラニンスキャニングなんかによく使用します。ここではプライマーの設計含めて、方法を紹介します。
Primer Design
プライマーの設計は、変異を入れたい部分を中心にプラスミドをぐるっと一周させるような設計をします。例を見てみましょうか。
5'-GACTGTACCAAGTTTCAAACCGGCACCACAGTGCGCTCAA-3'
このような配列があった時に
5'-GACTGTACCAAGTATCAAACCGGCACCACAGTGCGCTCAA-3'
このようにT→Aと変異を入れることを考えてみましょうか。
プライマーは変異を真ん中に置く
全長28bpとすれば、下のようにプライマー設計すればいいですね。
Fw Primer:5'-GACTGTACCAAGTATCAAACCGGCACCA-3'
Rv Primer:5'-CTGACATGGTTCATAGTTTGGCCGTGGT-3'
Method
1.PCRチューブに反応溶液を調整する
Reagent | 容量 | 最終濃度 |
---|---|---|
template DNA | 50 ng | 1 ng/µL |
5µM Fw Primer | 2 µL | 0.2 µM |
5µM Rv Primer | 2 µL | 0.2 µM |
10x PCR Buffer | 5 µL | 1x |
dNTPs | 5 µL | 1x |
PCR enzyme | 1 µL | - |
(25 mM MgSO4) | (2 µL) | (1 mM) |
DDW(H₂O) | Up to 50 µL | - |
※10x PCRにMg²⁺が入っているものもあるので、Bufferの組成参照
2.サーマルサイクラーの準備をする
基本的には酵素によりますが、95℃,2minでインキュベートした後に95℃,30sec→(Tm-5℃),30sec→72℃,(1kb/min)で30サイクルほどかければよいかなと思います。
※Taqポリメラーゼは比較的熱に弱いので、KOD Polymerase、Pfu Polymeraseの場合には95℃→98℃、伸長温度も68℃に変更しましょう。製品書見つからなくてもこれでかければ大体いけます。
3.アガロースゲル電気泳動によりバンドを確認する
※PCR産物に直接Loading Dyeを入れず、パラフィルム上でサンプルとLoading Dyeを混ぜたものをアプライしてください(これは後でDpnIと呼ばれる酵素をそのままPCR産物に入れるためです。)
4.バンドが確認できたら、PCR産物に0.5µLのDpnIを加え、軽くタッピングした後、37℃で2時間インキュベート
5.DpnI処理産物をカラム精製する
6.カラム精製産物を形質転換
これで基本的な実験は終わりになります。あとはプラスミドを抽出した後に塩基配列決定法にて変異が入っているかを確認すれば大丈夫です。(制限酵素部位の付加・削除に関しては制限酵素でかくにんできます)
ちょっとしたコツと原理
DpnI処理って?
DpnIはメチル化したアデニンを認識して切断する制限酵素です。PCRで増幅した産物はメチル化していないので、DpnIで切断されませんが、一方でプラスミドはズタズタになります。すなわち、 変異の入ったDNAのみ が菌体に取り込まれるようになっているわけですね。
PCRがマジでかからない
➡Tm値を下げまくっちゃって大丈夫です(私自身35℃まで下げたことがあります)。それでもだめなら酵素を変えてみましょう。だめなら終濃度5%のDMSOを加えてください。これもだめならプライマーの買いなおしですね(プライマーを長めにとるといいです)...