大腸菌の形質転換(ヒートショック法)
ヒートショック法は熱を加えることで大腸菌にプラスミドDNAを取り込ませる実験手法のことです。クローニングなどで必ず使用するのでできるようにしておきましょう。
Method
1.1.5 mLチューブに反応溶液を調製する
Reagent | 容量 | 最終濃度 |
---|---|---|
コンピテントセル | 50 µL | - |
DNA | 10-50 ng | - |
ここのコンピテントセルの量はプラスミドDNAなら50 µLほど、ライゲーション産物やGibson assembly産物などであれば100-200 µLほど使用しましょう。
2.氷上で10minインキュベートする
3.42℃で1minインキュベートする
4.すぐに氷上に戻し、2minインキュベートした後にSOC培地を加える
5.37℃で30min-1h回復培養する
抗生物質がアンピシリンであればここの過程はスキップして大丈夫です。
6.抗生物質入りの寒天培地にスプレッダーで培養液を散布し、37℃で寒天培養する
これで終了です。次の日にはコロニーが出現していますので、コロニーPCRや液体培養を行います。
使用する大腸菌の株
形質転換はクローニング以外にもタンパク質の発現をさせたりもできます。目的に応じて様々な株を使い分けていきましょう。以下に簡単に使用目的と大腸菌の株をまとめておきます。
株名 | 使用目的 | 特徴 |
---|---|---|
DH5α | 一般的なクローニング、プラスミド増幅 | - 高効率形質転換 - endA1変異(DNA分解酵素抑制) - recA1変異(再組換え防止) |
TOP10 | 一般的なクローニング、サブクローニング | - DH5αと似た高効率形質転換株 - 自然発現が抑制され背景ノイズが少ない |
XL1-Blue | ブルー/ホワイトスクリーニング、β-ガラクトシダーゼ解析 | - lacIq変異(レポーター遺伝子の制御が容易) - recA1変異(再組換え防止) |
JM109 | ブルー/ホワイトスクリーニング | - lacZΔM15補完によりスクリーニングが容易 - 一般的なクローニングにも使用可能 |
BL21(DE3) | タンパク質発現 | - λDE3リシストロンを持ち、T7プロモーター制御下でのタンパク質大量発現に最適 |
Rosetta (DE3) | 真核生物由来タンパク質の発現 | - 真核タンパク質の発現に必要なtRNAを追加 - BL21(DE3)由来株で特殊タンパク質の発現に適応 |
C41(DE3) | 難発現タンパク質の発現 | - BL21(DE3)由来株 - 過剰発現による毒性を軽減 |
C43(DE3) | 難発現タンパク質の発現 | - BL21(DE3)由来株 - 特定タンパク質の高効率発現が可能 |
S17-1 | コンジュゲーション(プラスミドの細胞間移動) | - Fプラスミドを保持 - 他の細菌への遺伝子移行に使用 |
Stbl2 | 大型プラスミド、不安定な配列の増幅 | - 反復配列や大型プラスミドを安定して保持可能 |
NEB 10-beta | λRedシステムを用いた遺伝子操作、クローニング | - 高効率の形質転換 - λRed組換え技術に適応 |
うちがよく使用しているのはクローニングならDH5α、タンパク質発現ならC41(DE3)、Rosettaあたりですかね。
それと、これなんでかわからないのですが、カナマイシン耐性を使用する際のJM109の使用は避けた方がいいです。経験上白色のぽろぽろしたコロニーが出てくるのですが、プラスミドが取れないです。
抗生物質の濃度
抗生物質の種類に応じて濃度を変更しないとコロニーが生えてこなかったり、生えすぎて偽陽性コロニーが出てくることがあります。抗生物質は強すぎず弱すぎない濃度を使用しましょう。
抗生物質名 | 推奨濃度(最終濃度) |
---|---|
アンピシリン | 50–100 µg/mL |
カナマイシン | 25–50 µg/mL |
ストレプトマイシン | 50 µg/mL |
クロラムフェニコール | 25 µg/mL |
テトラサイクリン | 10–15 µg/mL |
ゲンタマイシン | 10–15 µg/mL |
スペクチノマイシン | 50–100 µg/mL |
作成日:2025/1/15