生物工学ちゃんの実験室

ゲノムPCR (Genomic PCR)

大腸菌や酵母などのゲノムDNAを鋳型として、目的の遺伝子を増幅する方法です。プラスミドPCRに比べて鋳型が巨大で複雑なため、少し工夫が必要です。

原理と注意点

ゲノムDNAは非常に長く絡まりやすいため、調製時に物理的な切断(シェアリング)を受けやすいです。また、GC含量の高い領域や繰り返し配列が含まれることが多く、通常のPCRよりも反応条件がシビアになります。

準備するもの

  • 精製済みゲノムDNA (Genomic DNA)
  • プライマー対
  • 高効率DNA Polymerase (KOD FX Neo, Phusionなど推奨)
  • GC Enhancer (DMSOなどで代用可、GCリッチな場合)

実験プロトコル

1. ゲノムDNAの調製

市販のゲノム抽出キットを使用するか、簡易抽出法(熱抽出など)を行います。大腸菌なら、コロニーPCRの要領で菌体を水に懸濁し、98℃ 5分加熱した上清をそのまま鋳型にすることも可能です。

2. 反応液の調製

ゲノムPCRでは、非特異的な増幅を防ぐため、酵素は「Hot Start対応」のものを使うのが強く推奨されます。

試薬量 (50µL系)
2x PCR Buffer (dNTPs, Mg含)25 µL
Forward Primer (10µM)1.5 µL
Reverse Primer (10µM)1.5 µL
Genomic DNA50 - 100 ng
DNA Polymerase1 U
滅菌水up to 50 µL

3. サイクル条件

初期変性の時間を長めにとるのがポイントです。

  • 初期変性: 94-98℃, 2-5分(ゲノムを完全にほぐすため)
  • サイクル(30-35回): 通常のPCRと同様
  • 伸長反応: 酵素の性能に合わせて設定(通常 30sec-1min/kb)

💡 成功のコツ

  • 鋳型を入れすぎない:ゲノムDNAを多く入れすぎると、不純物の持ち込みや非特異吸着でPCR阻害が起きやすいです。薄い方がうまくいくことが多いです。
  • プライマー設計:ゲノム上には類似配列が多数存在します。BLAST検索などで、プライマーが目的以外の場所に結合しないか確認しましょう。
  • 2ステップPCR:Tm値が高い(>68℃)プライマーを設計し、アニーリングと伸長を同じ温度(68℃など)で行う「2ステップPCR」にすると、特異性が上がります。